2019年6月19日水曜日

その小さな身体に大きな使命を抱えて





昨年の7月。私のマンションのベランダで一匹の小さなカエルを見つけました。

彼の身体はとても小さくておそらくはアマガエル一年生だと思います。ベランダに倒してある一本の竿の下に隠れていました。とても暑かったのでしょう。
私はなんとなく不思議な気持ちになりながらも最初は霧吹きで水をかけていました。
そうすると余計に竿の下の奥に(笑)
とても警戒心が強くびっくりしたのでしょう。

それから数日後に小さな水入れを買いそこに水を入れ彼の近くにそっと置きました。
そして翌日にはそのお水に浸かっていました。
その時から少しずつですが警戒心は薄れていったように思います。


そして外は夏なので部屋の明かりに誘われて小さな虫がたくさんベランダの窓にひっつきます。彼も水ばかりでは生きてはいけません。最初はほんの少し警戒していましたがやがてベランダの窓に張り付きお腹を満たすようになりました。
そして満たされるとゆっくり水に入りそして植物の葉の上に。。


もう八月ともなると彼は警戒することなく大胆に食事をするように(笑)
そしてベランダから部屋の中を覗き込み私の顔をジッと見ていたり。
この頃からなんとなくですが私に安心してくれたのだと思います。
元気に食べ、元気に水を飲み、元気にベランダの中を探索し。。
最初の頃はちょっとした作業でベランダに手を伸ばそうものなら慌てて離れていきましたがやがては微動だにせずに(笑)

ただ彼は非常に人見知りならぬカエル見知り?が激しく通りすがりのアマガエルたちには一切心を許さなかったと思います。ただ一匹をのぞいては。そのお話はまた後ほど。通りすがりの大きなカエルが来た時などは逆に私のほうへ逃げてくるくらいでしたから私に安心し少しは信頼してくれていたのでしょう(笑)


ここは田舎なのですが私のマンションの周辺はアマガエルたちにとってはちょっと住みにくい場所です。


私のマンションの前にある道路は対向車とすれ違う時は少し気を使うようなさほど幅の無い道路なのですがこの地域では一番交通量の多い抜け道として使われています。
朝夕などは脇道からの合流がなかなか難しいようなそんな感じなのでちょっとした国道並みの交通量の多さです。
そしてもう一つ、サギが非常に多い地域でもあります。田んぼも多いのですがサギが固まって何かを捕食している光景をよく目にします。


ベランダの彼がどこをどのようにして私の元にたどり着いたのかはわかりませんが秋になるともうこのベランダは彼のもっとも居心地の場所となっていたのでしょう。

私は、もしかしたら彼がここで冬眠することもあるのかもしれないと思っていたので昨年の10月くらいからベランダを徐々に暗くしました。農ビや防草シートその他いろいろなものを購入し考えながら。
でもね、決めるのは彼です。彼がもっとも安心できるところで冬眠すればいい、本当にそう思っていました。いつでもこのベランダから出れます。

そうして彼は12月、私のベランダで冬眠に入りました。

ベランダの気温が10℃を超えないように気をつけながら。


そして4月、彼は冬眠から目覚めました。ほんの少し痩せていましたが体格はさほど変わっていませんでした。彼は昨年秋くらいから身体がすごく大きくなりもう立派なオスという見た目にまで成長しました。


「ケッケッケ」


あまり上手とは言えない朝一番のその声がとても心地良く感じられました。


今年5月に入り田んぼから賑やかな声が毎日のように聞こえていました。
その声に反応してベランダの彼も鳴く時もありました。


そして5月28日の深夜未明、彼は旅立ちました。


大きな使命を抱えて。



6月19日現在も帰っていません。私はね?もし彼が他にお気に入りの場所が見つかって彼なりに幸せに暮らしているのなら本当にそれはもう喜ばしいことだと心から思っています。
そしてここは車も多いしサギも多い。もし万が一天に召されたのであればその時の苦しみはどうか一瞬であったと思いたい、そう思っています。


それを思った時、まったく男のくせに何度も涙を流してしまいました。


約一年、彼を見守り彼とともに暮らしてきたのでやっはり愛着があります。

無事に戻ってきてほしいという気持ちもあるし、彼が幸せなら戻らなくてもなんでもいいという気持ちもあります。


ただ私は、彼をとても誇りに思っています。未来へ進んでいったことを。



彼は生きているという希望は持ち続けたいと思っています( ◠‿◠ )